GAS METER
通信機能付き膜式マイコンメーターができるまで
通信機能付き膜式マイコンメーターができるまで
ガス業界では、現在多くの家庭に設置されているマイコンメーターを通信機能付きマイコンメーターに変更する計画が着々と進んでいます。当社では、実測式の膜式計量方式を搭載した「通信機能付き膜式マイコンメーター」を業界で初めて開発し、量産化を実現しました。この、通信機能付き膜式マイコンメーターができるまでの取り組みをご紹介します。
通信機能付き膜式マイコンメーター模型(スケルトンタイプ)
通信機能付き膜式マイコンメーターのコンセプトが生まれたのは2011年8月、大手ガス会社のガスメーターに対するニーズに応えるためでした。先行して開発が進められていた超音波式ガスメーターに搭載されていた機能の中で、低消費電力の無線通信「高速Uバス」、遮断・復帰の双方向作動が可能な「モーター式遮断弁」、この2つの機能を計量機能面では既に実績のある膜式ガスメーターに搭載することで、"機能、信頼性、コスト面からお客様のご要望に応えられる新しいガスメーター"を目指して開発が始まりました。
これまでの「新しい製品を開発する際の担当部署は技術部」という固定観念にとらわれず製造部、業務部、品質保証部の主要メンバーを集めプロジェクトを結成。常にお客様のご要望を収集をしながら、いくつもの課題をクリアしつつ試作を進めました。
まず初めに取り組んだ課題がガスメーターを通過するガスの使用量を計測する方法です。従来の小型ガスメーターに使用されていた機械式接点によるリードスイッチから、耐久性と信頼性に優れる無接点式のMRセンサーに変え、加えて複数のMRセンサーチップを使用しました。
これによりこれまではメーター1回転あたりの出力されるパルスが1パルスだったのに対して、その8倍、または12倍のパルス出力となりメーター分解能が向上したため、計量法で定められているカウンターの最小目量0.2Lを満足することができました。
またMRセンサーを駆動させる磁石の種類、サイズ、磁束密度を選択し、磁石とセンサーの位置精度や温度変化による感度特性なども考慮した上で、流量センシング部の構造を決定しました。
次に課題となったのは遮断弁部の構造です。これまでのNB型、JB型で使用されてきた遮断のみの単方向弁に対し、新しく搭載する弁は遮断および復帰が可能な双方向遮断弁でした。この遮断弁は作動ストロークが従来の単方向弁よりも少ないことから弁部にガスが流れる際の圧力損失が大きいことがわかりました。
圧力損失の様子と双方向遮断弁(イラスト)
そこでメーター内部の各箇所において圧力損失を下げるためのアイディア出し、形状設計、流動解析シミュレーション、3Dプリンタモデルによる実測確認を繰り返し行いました。その結果、ガスメーター全体の圧力損失を抑えることができました。
通信機能付き膜式マイコンメーターの新しい特長として、ガス使用量の指針値表示をこれまでの機械式カウンターから液晶式カウンターに変えた点があります。
変更にあたって、外部からのノイズ等の影響があった際にも指針値表示を確保する必要性が浮上。そこで計量法で規格されている従来のノイズ試験条件に加え、さらに過酷な条件においても影響を受けない指針値表示をする筐体にすることができました。
さらに従来の器種(マイコンメーター、※画像上)ではLEDの点滅パターンで安全機能を表示していましたが、液晶表示(※画面下)では具体的なわかりやすい表示が可能となりました。
地震疑似発生装置による実験の様子
液晶画面の左上に「ガス止」右上に「G」マーク
ガス使用量の測定誤差の補正方法として、従来品は機械的なギアによる補正を行ってきましたが、通信機能付き膜式マイコンメーターでは電子的な器差補正が可能となり、使用流量域に応じた補正ができるようになりました。また通信機能付き膜式マイコンメーターの量産メーター組立にあたっては、数百台以上の詳細データを基に誤差の少ない安定した計量性能を保てる補正方法を検討しました。この細かな補正方法の確立により通信機能付き膜式マイコンメーターの量産化に繋げています。
「タケナカ」の創業以来の「膜式へのこだわり」と「開発マインド」から生まれた都市ガス用「通信機能付き膜式マイコンメーター」。今後さらなる進化のためにこれからも探求を続けていきます。